APDの聞こえ方 こうしていただけると助かります 会社でのサポート編

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会社などで働くAPD当事者さん(以降、当事者さんと表記)たちが、安心して、お仕事で成果を出すためには、周囲からの理解と援助が必要です。そのため、今回は、当事者さんと一緒に働く、会社の上司や、スタッフの皆様に向けて、当事者さんの聞こえ方と、「会社で、こうしていただけると助かります」ということを書いてみました。

「APD」とは、「聴覚情報処理障害」の略称です。APDは聴覚に問題はなく、「聞こえる声を言葉に変えることが苦手」なのです。APDといっても、その状態、程度は個別差があり、様々です。この記事は、APD当事者である記者の体験を交えて記載されております。ご了承いただけると幸いです。

APD当事者の聞こえ方

これに関しては、今はyoutubeに沢山の投稿がされていて疑似体験ができるようになっていますね。参考にさせていただいたのは、こちら。

「1.笑歩さん」のビニール音と音楽を流しながらの話し声のかすれ具合は、「そう、こんな感じ!」と共感しましたし、「2.パラチャンネルさん」のレジでの会話も、実際の聞き取りにくさを上手に表現してくださっていると思いました。

他にも、色々な動画があるので、一度、ご覧いただけたらと思います。

いくつも音がある場所や、いきなり話しかけられたりすると、音を聞きとることがさらに困難になります。そこで、次からは、「こうしていただけると助かります」という内容をいくつか上げてみました。

こうしていただけると助かります。

いきなり話しかけるのではなく、一度、声をかける。

例えば、当事者さんがコピー機で印刷をしているとき、いきなり話しかけられても、はっきりとは聞き取れません。「何か声がした」と気づく程度です。自分に向けて話をされているとは、分かりませんし、人によっては、全く気付けない場合もあります。

なので、一度、声をかけて、当事者さんの注意をご自身に向けてから、お話しをしていただけると助かります。

声がけをしていただくと、当事者さん側もそちらに意識が向き、「聞くぞ!」と注意を向けることができます。それでも、やっぱり聞こえないときもありますが、一度試していただきたいです。

電話での聞き取りは難しい。できるなら、チャット、メールでお願いします。

電話は相手の姿が見えません。表情も口の動きも見えず、本当に音のみの世界です。電話応対中、相手の声が聞き取りにくいので、受話器を当てた耳の反対側を手で押さえます。そうすると、外部の音に邪魔されにくくなり、受話器の向こうに集中することができます。けれど、これ、メモを取りにくいのです。

電話応対している同じ空間に、会話する人がいるときは、かなり聞き取り困難になります。反対側の耳を押さえて応対しても、聞き取りにくい。そうなると、当事者さんは不安や焦りで、ますます集中しにくくなります。そして、ますます聞き取れなくなります。

そのため、まず、APD当事者さんが電話応対しているときは、できるだけ静かにしていただけると、助かります。お仕事がお忙しくて、そこまで対応するのは難しいかもしれません。でも、APD当事者さんたちは、本当に音が沢山あると、一点に集中しづらいため、聞き取りにくいものが、さらに聞き取れなくなります。助けていただけると、本当に、ありがたいです。

このように、電話応対は、かなり難易度高めなので、できることなら、APD当事者さんの業務内容から、電話応対は外していただけると助かります。また、チャットやメールでお話しをしていただけると、さらに助かります。

目で見える文字として、内容を残していただけると、当事者さんは、落ち着いて、その内容を理解することが出来ます。また、「言った言わない」というリスクを避けることもできます。不要なトラブルを避け、お仕事の効率をあげるためにも、当事者さんには、チャット、メールでの対応が適していると思います。

大きな声ではなく、ゆっくり、はっきり話す。

聞こえないと気づいてくださる方で、「聞こえないなら、声のボリュームを大きくしたら聞こえるだろう」と当事者さんの耳の近くで大きな声でお話してくださる方がいらっしゃいます。

でも、APDは、聴覚に問題はありません。音は聞こえているので、耳のそばで大きな声でお話しいただくと、残念ながら、耳が痛くなるだけで、聞こえないです(泣)。

大きな声ではなく、ゆっくり、はっきりお話しいただけると聞き取れる場合が多いです。

周りに音があまりなく、話すお相手が一人くらいなら、この話し方が聞き取りやすいと思います。

一度に沢山の音がある場所は聞き取りづらい。

この回は、「こうしていただけると助かります」というより、「知っていただけると助かります」です。

会社と言えば、「居酒屋さんなどでの飲み会」!

今のご時世、無理に誘われることは、めっきり減りましたね。でも、飲み会場所として、よく選ばれる居酒屋さん。当事者さんとしては、かなり辛い場所です。会社の方とのお食事や、会話は楽しいし、できることなら、飲み会に参加したい!でも、やっぱり聞こえないのです。

先の電話応対のお話でもお伝えした通り、当事者さんは、周りが賑やかだと、聞きたい声を聞きとることが難しくなります。聞きたいけど、聞こえません。こういうときは、大きい声で話をしてもらえると聞こえるかもしれませんが、それは、お店や周りの方へのご迷惑にもなりますよね。

皆は楽しそう。そこに自分も入りたいけど、聞こえない。話しかけてもらえるけど、聞こえないから、おかしな対応をしてしまうこともある。そうなると、また、人が離れていく。

そういう経験は、悲しく、恥ずかしく、結果、飲み会や人の集まりに近づかないようになっていきます。また、賑やかな場所で、無意識に、神経を研ぎ澄ましているため、終わった後はぐったりと疲れてしまいます。

この楽しそうな集まりに参加するために当事者として何ができるのか、どうすれば、安心して、周りの負担にならずに、その場にいられるのか。記者自身、勉強中です。

複数人の会議などでは、便利道具を使わせてください。

会議中、人の声を聞きとることは難しいです。

以前、コロナが蔓延していた頃、社員はマスクをし、席を離して会議をしていました。これがまた、聞き取りづらい。マイクを使ってくださるのですが、これも声がくぐもって聞き取りづらい。

また、話し合いをするときは、複数人の方々が一度にお話することもあります。これは、居酒屋さんの時と同じで、聞き取りたい声を拾いづらくなります。

そこで、会議用送信機を机に置くことを許可していただきたいのです。

これは、360度の声を拾ってくれるもので、音を拾う方向もタップするだけで切り替えられます。これを使って、話す方にマイクを向け、その声を拾い、当事者さんは、ご自身の耳につけた受信機でその声を聞きます。一般に難聴の方がつける「補聴器」はあらゆる音を拾って増幅させますが、「送受信機」は、聞きたい声だけが直接耳に届くため、当事者さんたちに適しています。

また、会議を録音できるようにレコーダーの使用許可をいただきたいです。

言葉を聞き逃し、困惑している間に、会議は進んでしまいます。それを、後から落ち着いて、聞き直すことができるなら、その内容を理解し、お仕事に安心して取り組めるようになると思います。

まとめ

いかがでしょうか。

日本でAPDは、障害者雇用の対象外です。現在、「難聴、発達障害」などの枠で、障害者雇用の対象となることはありますが、APDだけでは、対象外となります。

また、送受信機(約20万強)は高いですし、居酒屋問題は具体的な解決策はみえません。

さらに、「助けたい」という気持ちがあっても、多忙な業務の中、なかなかそこまで、できないのが現状ではないかと思います。

しかし、APDについて知り、適切な援助をすることで、当事者の方々が安心して、働き続けることができます。先にあげた方法ができなかったとしても、APDについて理解しようとして下さること、それを当事者の方に伝えてくださることで、当事者は安心できるかもしれません。

まずは、知ること。そして、お互いが、安心して働けるように、一緒に工夫すること。

それは、APDに限った話ではないように思います。

APD当事者の方々と会社の皆様がお互いに、安心して、コミュニケーションをとることができ、働くことができる場所が増えることを願っております。

《参考文献》

1.『マンガ APD 聴覚情報処理障害/LiD 聞き取り困難って何?』きよこ/著 小渕千絵・佐々木香緒里/監修 2022年8月20日 合同出版

2.『APD(聴覚情報処理障害)がわかる本 聞きとる力の高め方』小渕千絵/監修 2021年3月30日 講談社

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